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February 3, 2011

奥利根の国産喫煙パイプ工場訪問記

東京駅から上越新幹線に乗り、
スノーボードを持った若者や外国人と一緒に揺られること約1時間、
スキーで有名な越後湯沢駅の一つ手前、上毛高原駅から車で10分ほどの場所に
戦前から喫煙パイプを作り続ける「深代喫煙具製作所」の工場がある。

午前11時頃に到着したが、新幹線から降りてくる客は私達以外にはおらず、
がらんとしたプラットフォーム、窓の外には北国特有の
急勾配に切り立った青いトタン屋根の民家、雪がちらつく。

なぜこんな場所に新幹線の駅があるのかと疑問に思ったが、
東北地方出身の昭和の大政治家達が上越新幹線を誘致したという話を聞き、
理由はそれだけでないとは思うが、妙に納得がいった。

改札を出ると、深代喫煙具製作所の深代淳郎さんが迎えに来てくれていた。
深代喫煙具製作所は昭和6年以前に東京の下町で煙管やパイプを製造を開始し、
太平洋戦争中に現在の地、群馬県のみなかみに工場疎開してから現在まで、
職人達の手で国産のパイプを作り続けている。



群馬県最北に位置するみなかみ町の新治地区に工場がある。
工場の裏手には川が流れる。川沿いは「湯宿温泉」の温泉宿。
川を遡ると、東京首都圏の水がめである利根川上流ダム群の一つ
「相俣ダム」に繋がっている。



工場を案内してくれた専務取締役の深代淳郎さん。父上である社長は
ハンドメイドパイプ「Tsutomu ORIGINAL」で有名な深代勉さん。
後ろの棚には古今東西の珍しいパイプがたくさん並んでいた。

 これがパイプの原材料である
 ブライヤーの原木。

 社長の勉氏がスペインを訪問した際に
 材料屋で見つけて譲ってもらったもの。
 樹齢は180年くらいのものだという。


木製のパイプは現在ほとんど地中海周辺で採れる「ブライヤー」と呼ばれる
ツツジ科の植物の根を原材料とする。
戦時中はブライヤー材が入手困難となり、その代替として日本に自生する
ツツジ科植物を使用し「オリエンタルブライヤー」という名で売られたことも。


パイプの製造は大きく「マシンメイド」と「ハンドメイド」に分けられる。
マシンメイドパイプは素材を機械でカット、切削され、パイプの形になる。
パイプの表面に現れる木目(グレイン)の程度にはバラツキがある。
全てが機械によるのではなく、研磨や着色などの工程は手作業で行われる。


ハンドメイドパイプは、職人が材を吟味し、美しい木目が現れるように
パイプの形を手作業で削り出していく。削り出す途中で傷などが
出てくることがあるが、最後に補修し着色されて目立たなくなる。
全く傷のないものは珍しく、
パイプに「F」(Flawless)の刻印が押され高値が付く。


原料倉庫。輸入されて来たブライヤー材を乾燥させる。


「プラトー材」と呼ばれるこれらの木片1個から
約2本のマシンメイドパイプが作られる。
通常使われるブライヤー材は樹齢が70年から80年のもの。


イタリアやギリシャで産出されたプラトー材は、
このような麻袋に詰められて輸入される。


熟練の職人さんによる、削り出しの様子。


ほんの数十秒で形が出来上がる。


パイプの上半分が削り出されたもの。


次の工程、パイプの下半分の削り出しや煙道の穴あけ作業が行われる部屋。
年季の入ったストーブが置かれ、外は雪が降っていても作業場は暖かい。


マシンメイドのパイプを削り出す機械。
真ん中にセットされた木型に合わせて両側のパイプが削り出されていく。


様々な種類の木型が置かれた棚。


削り出されたパイプ。まだ表面に段差やざらつきが残る。
次の工程で煙道の穴あけをおこなう。


回転するドリルにパイプひとつひとつ手作業で穴あけをする。


工場で最年長(82歳)の職人さんの作業の様子。
削っているのはシガレット用のヤニ取りホルダーの一部。


削り出されたエボナイト製のステム(吸口)。
エボナイトは古くから絶縁体として工業分野で使われていた天然ゴム製の樹脂。
使い込むうちに変色し歯形がついたりするが、独特の質感で人気が根強い。
最近はエボナイトの代わりにアクリル樹脂が使われる事が多くなった。


パイプにステムを取り付け、ヤスリでバリ取りと研磨をしていく。


サンドペーパーの目の細かさを変えながら何度もヤスリがけされる。


磨き上げの最終工程。
先ほどの写真と同じパイプだが、光沢や木目がきれいに出てきた。


研磨作業を行う部屋。
使い込まれた道具類にヴィンテージパイプのような味わいを感じる。


サンド仕上げを行う部屋。


 小窓から覗きながら、
 職人さんが一本一本
 サンドを吹き付けていく。

 サンドブラスト加工されたパイプは
 木の堅い部分だけが削られずに残り
 木目を活かした独特で
 荒々しい表面になる。





傷や穴を補修され、着色を待つパイプ。


筆で着色し乾燥させた後、パイプが完成する。


工場ではパイプ以外にも傘の柄の部分や、
自動車のシフトレバーなどが製作されている。




パイプの製造過程や作業場を見て、職人達の技と心を肌で感じることができた。
熱心なパイプ愛好家が、はるばる工場を訪ねてくることもあるそうだ。

自分でもパイプを数本持っているが、今まで以上に大事に使おうと思う。
タバコというと、文字通りなにかと煙たがれるご時世だが、
パイプ作りに携わる人々の姿や、精魂込められ出来上がるパイプを見ていると、
これは後世に残すべき、我々が誇るに値する文化だとあらためて感じた。



株式会社深代喫煙具製作所
群馬県利根郡みなかみ町須川1081
http://fukashiro.co.jp/

(text/photo: KIYOTA)


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